気苦労な散髪

 髪を散髪するのがあまり好きではない。髪型が変わることがイヤなわけではないから、正確に言うと、美容院に行くのがあまり好きではない。美容院でつくってもらうメンバーズカードには、「20日に一回のペースで通ってください」などと書いているけど、20日に一回ってウソでしょ?というかんじだ。思い起こしても、だいたい150〜180日に一回くらいのペースでしか通ってないし。
 新商品をすすめてくるのをいちいち断るのがいやだし、髪を洗うときに顔にガーゼをかけられるのもいやだ。まあそういうのは別にたいした理由ではないんですけど。化粧品もそうだけど、特定の店員や美容師と懇意になって得意客になるという芸当が、どうもへたくそなのが原因かもしれない。
 美容師さんはかなり個人情報を聞いてくるし、それをおそらくメモっている。次にその店にいって、別の美容師にカットしてもらっても、以前来たときに話した内容をふってくるのでちょっとこわい。
 てるてる坊主みたいな格好で無防備なまま自分のことを喋らされるのは、喋ること自体がかならずしも苦手ではないあたしとしても、正直苦手だ。これを突破する方法は、美容院に行かないか、懇意の客になって自分のことをよく知ってもらい、喋ること自体に抵抗を感じなくなるようにするか、だ。前の選択肢は、それをやめたらさすがに枯れてるみたいでちょっと。後者は、正面突破かぁ・・・そういう息のあう美容師さんが見つかればいいんだけどなあ。20日に一回のペースで探しに行かなきゃだめってことかしらん。
 つい最近散髪したばかりなので、しかもまたもやベリーショートにしてしまったので、今は髪に対して非常に神経質になっている。鏡に向かっては前髪だのサイドの髪だのいじくりまわしている。
 (めずらしくも)無口な美容師が唯一聞いてきたのが、「前髪もっと切りますか?」だった。はい、と答えたら、遠慮なくジャキジャキ切られてしまった。それで前髪が眉毛の3cmくらい上にある。ほとんどない。髪型の写真集を見ても、他の女の子の髪型を見ていても、ベリーショートで前髪がすごく短いのは、個人的には好きだしかわいいなあと思う。でもいざ自分がその髪型になってみると、はたして似合っているのかどうか自信がない。
 とかなんとか思っていて、村上春樹の『やがて哀しき外国語』の「運動靴をはいて床屋に行こう」を読んだ。もう今のあたしの気持ちにぴったし!というところでめちゃくちゃおもしろかった。
 村上氏にとっての〈男の子>のイメージが
「1.運動靴を履いて
2.月に一度(美容室ではなく)床屋に行って
3.いちいち言い訳をしない」
というものらしくて、な、なかなか意外なあたりからつっこんできたユニークな<男の子>像であります。しかし以下の文章は「言い訳」というか愚痴というか、いかに床屋さんで苦労してきたかがひたすら語られていて、もう<男の子>じゃなくていいからまともな髪型にして!と叫びだすあたりは、床屋さんとの絶縁宣言? 
 んー、みんな人知れず悩んでいるのかなあ。いや、あたしは床屋さんには行かないですけどね。
(01.15..02)