トロイ

troy
2004年、米
監督:ウォルフガング・ペーターゼン
出演:ブラッド・ピット
エリック・バナ
ピーター・オトゥール


 ギリシア神話上の戦争とされるトロイア戦争を題材に、アキレスやヘクトールら古代ギリシアの神話的英雄たちが活躍する様が描かれる。小アジアを舞台にした古代の戦争シーンは迫力もすごくて見ごたえがあった。武装や武器や戦車や戦い方や埋葬の仕方が時代考証的に正しいのであれば、とりあえずいうことなしです。
 とはいえ、ハリウッド的脚色がかなり為されているので、ストーリーも登場人物の描き方もどことなくヘン。ハリウッド的に善悪をぱっきり分けて分かりやすい英雄譚にしたら、アキレスの扱いももうちょっと小マシになったんではないかとも思う。でも中途半端に原作に引きずられているのか、意気込みは感じるけど何がやりたかったのかよく分からなかった。それで、あまり話の内容について書く気が起こらないので、以下ただの感想に走ります。
 戦争の発端になったとされるスパルタ王妃ヘレンは、トロイ滅亡のきっかけとなる傾国の美女。ヘレン役のダイアン・クルーガーは、美しいのは美しいのですが、いかにもハリウッド・セレブなお顔立ちでエクササイズ・ビデオとかに出てきそうなかんじなのです。人妻の彼女と恋に落ちてトロイアに連れて帰ってしまうという、戦争の原因を作ってしまうパリス(オーランド・ブルーム)の方が、顔立ちがすっきりしていて美しかったりするんで、あんまり説得力ないのうという始まりだった。
 が、見ていくうちに、傾国の役はヘレンじゃなくてパリスだろ、と思えてきた。なんというか、パリスのヘタレっぷりと可愛らしさは、どう見てもヘレンを超えていた。パリスがヘレンの元夫メネラオスと名誉をかけての一騎打ちをするんだけど、ゴリラみたいな相手に全然歯がたたなくて、もう今にも殺されちゃうー!というときには、ヘレン、見てないでオマエが剣を取ってパリス守ったれよ!て思わずツッコミを入れてしまうほど。アンジェリーナ様ばりに城壁飛び越えてパリスを救いにいってほしかったです(ダイアン嬢もそういうのが似合うお顔立ちだと思うの)。
 でもパリスのヘタレっぷりはその上をいっていて、なんと剣を放り出して兄のヘクトールの足にすがり付いてしまうではないですか。兄ちゃんも兄ちゃんで、思わずメネラオスを刺し殺してしまい、、、ま、あんなにかわいい弟に子犬のようにすがりつかれたらしょうがないでしょう。パリスがヘタレのくせに「ぼく王子だからがんばる」って言うたびに、ヘレンは「また無理しちゃって〜」と胸キュンしてたんじゃないでしょうか。それに最後の最後でパリスくん大活躍するし、もうこの映画の真の主人公はパリスでOK。アキレス役のブラッド・ピットは色ボケしたチョイ悪オヤジみたいな役柄でさっぱりだったし(多分、神殿の巫女とのラブロマを無理やり入れたことがこの映画の失敗ね…)。
(06.jun.2007)


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