夏至

La Verticale Del
2000年 仏・越南
監督:トラン・アン・ユン
出演:トラン・ヌー・イェン・ケー
   グエン・ニュー・クイン


 母の命日に三人姉妹が集まって、母の初恋について語る。父と相思相愛だとばかり思われていた母は、晩年ぼけて、父とは別の男の名前を呼んだのだという。誰の人生にもあるであろう些細なエピソードだが、母に関わる人々にとっては、さざなみのように静かに波紋を投げかけてくるものだったのかもしれない。
 映画はその後、三人姉妹それぞれの愛の在り方について淡々と映していく。夫との仲がうまくいかず不倫をつづける長女、妊娠中に信頼していた夫との関係に蔭りがさしてしまう次女、恋人よりも兄を慕っているらしい(?)末娘――ちょっとしたズレが波紋となって広がっていき、いつか不協和音を奏でてしまいそうな、そうした危うさと憂いを漂わせている。
 ただ、全体の印象はそう淡々としたものでもない。とくに毎朝ルー・リードの音楽で起き、寺院の鐘の鳴る中、ストレッチをしたりはしゃいだりする末娘と兄の日常生活など、舞台は香港でも東京でもいいよねというかんじでとにかく無国籍的。ヴェトナムの街中の風景もカフェでの食事もとってもオシャレなイメージで、それこそ女性誌でさんざん振りまかれる「オリエンタルなヴェトナム」そのまんま。
 なんというか、ストーリーは決して悪いとは思わないんだけど(おもしろくもないけど)、小津にオシャレエッセンスをふりかけたみたいで、全体的にちぐはぐな印象を受けた。あんまりなんも考えずに、美しいヴェトナムの風景やファッションやインテリアをぼーと見ているだけでいいかもしれない。日本の都会の夏は殺人的な暑さだけど、映画のヴェトナムは風が吹き抜けていて涼しそうだなあとか、ツヤのある黒髪ストレートをもう一度見直そうとか、明日の朝はルー・リードで目覚めてみようとか、製作者の意図がこんなところにあるとは思わないけど、これでいいじゃんもう、と感想にもならない感想しかでてこないのでした。
(29.jul.2003)


ke