夏休みの宿題

 わたしはマンガによく出てくるように、夏休み最後の日に宿題ができてなーい!といって大騒ぎする子ではなかった。できるものはちゃっちゃと終わらせる要領のいい子だったと思う。でも苦手な宿題というのもやっぱりあって、わたしの場合それは理科の自由研究と工作だった。
 適当に親に宿題をやらせたりするのはみんなフツーにやることと思う。わたしも工作は父に作ってもらっていた。二つ年下の弟も父に作ってもらってて、父はまったく同じ型、同じ大きさの船を二つこしらえてくれた。わたしが小学4年生、弟が2年生のときのことです。まあ父には悪いけど、あまりたいした出来栄えでもなく、9月の新学期には教室の後ろの棚にわたしの小さなお船はひっそりと飾られていた。
 問題に気づいたのは、優秀作品を集めた提示棚に見覚えのある船が飾られていたのを発見したとき。もちろんしっかりと弟の名前が掲げられていた。「狼狽する」とはあのことですね。小学4年生にしてはたいした出来栄えじゃないけれど、小学2年生にしてはそこそこの作品として評価されているという事実に妙に感心したりもした。が、しかし、全校生徒が毎朝毎夕通り過ぎる場所に、わたしの作品とまったく同じ形なのに弟の作品であり、しかもその実態は父の作品という代物が堂々と展示されている現実は、具合が悪いことこの上なかった。 
 どうやってその展示期間をしのいだのか覚えていないけれど、だれにも指摘された記憶はないから、だれも気づかなかったのかな。だからといってわたしの場合、宿題は自分でやりましょう、と反省することにもならないのです。なぜかというと自分でやった宿題が相当悲惨である場合も多々あったから。人にやってもらったほうがまし!というくらい恥ずかしい作品になったりするんですね。そのお話は次回に。