天使の涙

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堕落天使 fallen angels
1995年、香港
監督:ウォン・カーウァイ
出演:カネシロ・タケシ
レオン・ライ
ミシェル・リー
チャーリー・ヤン
カレン・モク


 ウォン・カーウァイの作品のうち、「恋する惑星」はあまり印象に残っていない。ストーリーと映像にブレの少ない「ブエノスアイレス」のほうが好きだ。両作品の間に作られているのがこの作品だろうか。「ブエノスアイレス」に比べて、ストーリーと映像のミスマッチが気になった。いや、ポップさを売りにする分、ストーリーは重さや深さを追求したものではないし、その辺が監督の意図だということも分かってはいる。むしろ映像のごちゃごちゃさが気になったというべきなのかな。
 全般的に、60年代以降のフランス映画のエッセンスが濃厚な気がした。当時の映画のもつポップさや実験性や無意味性は、バックグラウンドがあってはじめて意味とインパクトをもつものだったと思うけど、その上澄みだけを言語と場所を変えて見せられると、背景のないままに軽さや単純さに徹することの難しさを、逆に思い知らされた。登場人物の描き込みもバラバラな印象を受けたままに終わってしまった。あえてそうした印象を狙ったとも思えない。登場人物たちは人とのつながりを求めて失敗をくりかえすのだけれど、そこに妙に感情的なディテールが加わるから、徹底して人間関係が分解されているわけでもない。中途半端な印象を受けた。
 どうもこの映画からは、流行のお店のディスプレイ以上の何かを感じ取ることはできないような気がする。映像の首尾一貫性のなさ(いろいろやってみたかったんだろうけれど)がそれに拍車をかけているような気がした。
(05.jan.2004)


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