字体のはなし

 紙や本の整理をしていると、だんだんイライラしてくる。本の帯がちぎれたり、硫酸紙が破れたり、はさんである広告の紙や栞がバサバサ落ちたり、とにかく、イラッときたら即行ゴミ箱に捨てる。それから手や指に細かい切り傷がいっぱいできる。お風呂に入ると痛いくらい沁みて、こんなに傷ついているのかと溜息をつくくらい。お風呂上りにハンドクリームを塗って手当てをするけど、とくに指先のガサガサはなかなか治らない。 だいたい、指紋の彫が浅いのか、一枚一枚紙をめくるのも苦手なほうで、ハンドクリームはあちこちに常備している。今回は、ハンドクリームの減りが著しい。紙は潤いを奪っていくものらしい。気分のささくれだつ要因はほんとにたくさんある。
 ところで、本棚をさらっていると、昔の自分が書いたノートもたくさんでてくる。あまりじっくりみてもいないけど、字体って同じ人間でも変わるものなんだなあと妙に感心している。最近はもっぱらPCで書いてプリントアウトだから、字を書くこともめっきり減ったけど、それでも、今書く字体と昔の自分の字体は、見た印象がずいぶん違う。筆跡の鑑定者がみると、同一人物の手と判断するのかもしれないけど、性格診断とかは違ったものになるんじゃないだろうか。