猫とつかず離れず

 近所に猫がたくさんいる。
 家猫もいれば野良猫もいる。猫にもテリトリーがあるのか、たいてい同じエリアで同じ猫を見る。寄ってくるのもいれば、様子をうかがってさっと逃げてしまう臆病猫もいる。
 うちの家にも猫が来る。縁側の半透明の屋根のうえで、いつも寝ている子がいる。陽が照っていれば気持ちいいのか、寝息まで聞こえてきそうなくらい熟睡して、戸の開き閉めも慎重に、というかんじだ。雨がふるときは、軒下の小さな隙間で雨宿りしている。
 どの猫かわからないけど、ときどき、縁側に足跡をぺたぺたつけてくれる。うちは外にトイレがあるんだけど、どうもトイレの水を飲んでいるらしく、トイレにまで泥の足跡がついている。ヤラレタ、というかんじだが、こんな水のんでダイジョウブなの?と心配にもなる。
 夜中にねずみをおいかけて、うちの家の屋根裏を走り回っていたときもあった。ねずみが走ると天井がトテトテとゆれるから、あ、ねずみ!と分かるんだけど、猫が走ると天井がワッサワッサゆれる。底がぬけるからやめて〜!!とおもわず声をかけてしまうくらい、こっちも慌てる。こういうのがつづいて、ある日とうとうお風呂場の天井がぬけてしまった。トホホ。このときはつっかい棒で棚をつくるグッズをかってきて、それで天井をおさえて応急処置した。
 でも被害ばっかりでもなくて、縁側の窓ガラスに顔をぺたっとくっつけて、こっちを覗いているときもあったりする。これがかわいいのだ。めったにないけど、そういうときは、こっちが動くとびっくりするかもしれないから、じっと動かずに猫とにらめっこする。猫も意外と逃げない。
 あたりまえだけど、世の中には猫がイヤな人もいる。おばあちゃんは、猫をみると反射的に「しっしっ!」と追い払う人だった。ゴミをあさって散らかすから害虫といっしょだったみたい。ペットボトルの猫よけ水はもうめずらしくもなくなった。花壇におしっこされるのがいやなのは分かるけど、家の周りをそれで張り巡らしていたりするのは、はっきりいって、ひく。
 でもそんなのはまだかわいい。この前見たのは、塀の上にガラスの破片を接着剤で貼り付けてあるものだった。太陽に照らされて何かが光っているからなんだろう、と思ってみるとそれだった。サメの歯みたいな塀になっていた。こういうの作る人いるんだなーと思うと、ちょっとさぶかった。その人の心象風景がさぶそう。
(8.okt.01)